【14:00追記】2ちゃんねるやまとめサイトからお越しの皆様へ。このブログは桃井はるこさんを応援するファンサイトです。以下の文章は桃井さんご本人とは関係ありませんので、あらかじめご了承ください。
ここで紹介すべき話題か迷いましたが…。関係者のTwitterでの発言やBlogなどによると、アニメーション監督の今敏さんが急逝されたとのこと。今敏監督と言えば、「パーフェクトブルー」「パプリカ」など、写実的かつ色彩感溢れる絵作りの作品が有名。モモイストには「妄想代理人」でモモーイを「マロミ」役に抜擢した監督、といえばピンとくる方も多いはず。47歳と若く、創作意欲も旺盛だったとのこと。まだまだ道半ば、さぞ無念だったことでしょう。
追悼の意味を込め、2008年2月11日に開催された『今敏監督×桃井はるこトークショウ』に僕が参加したときにUPしたレポを過去ログから再掲。訥々と語りかけるような口調が印象的でした。
『進学説明会スペシャルトークショウ@神戸 生田神社会館』レポ
アート・声優系専門学校の進学説明会で行われるトークショウに、モモーイが参加すると聞いて、神戸は三宮までやってきました。場所は生田神社会館。生田神社は勝利祈願や縁結びに、ご利益のある神社なのだそうな。某ビッグネーム女優さんの結婚式が、ここで行われたのは有名。
10:40 早朝の新幹線で弾丸移動し、現地入り。会館は鳥居をくぐって直ぐ左にありました。とりあえず思いっきりフォーマルな雰囲気の館内にたじろぎつつ、1Fの喫茶店へ避難。遠征モモイストのみなさんと合流してしばしの談笑。この関東組の多さは何でしょうw
11:20 開場間近ということで、説明会会場の4F・富士の間へ。受付を済ませて待機列に。結構な人数(50名ほど)の列になりましたが、関西系のモモイストのみなさんも多く見受けられて一安心。
モモーイの服装は黄色の髪留め、コバルトブルーのインナー、グレーのセーター、黒のフリルスカート、茶系のカラータイツ、足元はよく見えなかったけれど、多分ブーツだったような。アメリカでしか販売されなかった大きなマロミのぬいぐるみを抱いての登場。
今敏×モモーイのトークセッション、テーマは『デフォルメしたキャラの演出と演技』ということで、今敏監督初のTVアニメ作品となった『妄想代理人』、そして作品内でモモーイが演じたキャラクター『マロミ』を主軸にトークが進みます。
まずはモニター映像で『妄想代理人』という作品、および『マロミ』というキャラクターの説明。…といっても15秒ほどの予告映像が流れただけでしたが(;^ω^)
今敏:マロミというキャラを発注したときに、某たれぱんだのイメージでお願いした。色が違えば問題ないだろうとw キャラクターの声は、リアルな存在ではない「ぬいぐるみ」が喋ったらどんなイメージだろう、と考えて、キャラクターの強い声をボイスサンプルで選んだところ、桃井さんだった。桃井さんとは以前、パーフェクトブルーの上映イベントがロフトプラスワンで行われた際に面識があったので、ボイスサンプルに知った名前があって驚いたのを憶えている。ずっと劇場作品を手掛けてきて、あまり「萌え」を意識したキャラクターはつくってこなかった。「マロミ」はそういう意味では狙ったキャラクター。ただ、萌えを揶揄したり、馬鹿にするつもりのキャラではない。
桃井:今監督の『パーフェクトブルー』が凄く好き。自分が居た世界をリアルに再現している。見ていて嫌な気持ちのしない、描写する対象を馬鹿にしていない作品づくりに感動した。
今敏:作品のためにアイドルとファンの関係を取材して、その濃密な関係に驚いた。それを偏見なしにそのままデッサンして表現したのがあの作品。基本的にリアルに見たままを再現したいという気持ちがある。マロミも、そのぬいぐるみが実在したらどんな声で、どんな風に喋るのか。見た人が、マロミがいかにも存在するようなリアリティを感じてくれれば、演出としては成功。
桃井:収録するにあたって「マロミってどういうキャラなんですか?」と聞いた時に、明確な答えが無かったんですよね。
今敏:「桃井さんのままで、作らなくていい」と答えたと思う。当初から詳細なキャラクター設定をしていたわけではない。月子役の能登麻美子さんに、半パート収録後くらいに「まだ月子がよくわからないんです」と言われ、「わからないことが分かれば良いんですよ」と答えたのが印象に残っている。
アフレコでは、マロミのリテイクはほとんど無かったとか。
今敏:単純なミス以外のリテイクは、イメージのズレが原因。桃井さんのときはほとんどなかった。
桃井:演じていて気付かなかったが、視聴した友人から、普段とそのままだと言われた。普段からマロミのように『休みなよ』『○○ちゃんが悪いんじゃないよ』と言っていたらしい。
今敏:初のテレビ作品だった妄想代理人は、制作している側も、この先どうなるのか分からないような、制作の仕方をしていた。1話の時点で最終話のキャラクター設定をフィードバックすると、視聴者側に先を読まれてしまう。アフレコも同じで、1話の段階で得られる情報だけでアフレコしてもらって、先の展開を読まれないようにした。
今敏:劇場版作品とTV作品では、演出の方向性が違う。劇場作品のアフレコは短期集中なので、すべての流れを把握した役づくりが必要。ただ役作りをきちんとし過ぎると、それがズレていたときに修正が難しい。若い声優さんは特に。そうは言っても収録日数は限られているので、双方で妥協点を探りあう。
ここで10話『マロミまどろみ』の冒頭部分の上映。アニメーション作品内で、アニメの製作過程を再現したストーリー。
今敏:『性質の悪い冗談』をやってみたかった。いかに製作現場が酷い状況かをコミカルかつブラックに表現した。当初はこの内容を実写でやろうとして、キャスティングまで進んでいたのだが、結局アニメのかたちに。
桃井:今監督の映像はリアルとよく言われるが、実写で表現する方向には行かないのですか?なぜアニメでリアルを追求しているのですか?
今敏:リアルに見えるが、実際には誇張したい部分をデフォルメして表現しており、エッセンスを取り上げてリアル風に見せている。あれもリアル、これもリアル、だと見ている側が疲れてしまう。音響の部分も同じで、声優さんの演技で「工夫しているな」「上手いな」と感じさせないような、自然な演出を心がけている。
桃井:『パーフェクトブルー』も、実写でやったら嘘っぽくなってしまうと思う。アニメだからこそ「ああ、こういう人居る居る」って思えるのかも。『千年女優』も実在する複数の女優のイメージを、うまく取り入れているんだろうな、と思う。実写で女優さんが出てきたら、その人のイメージで固まってしまう。
今敏:オタク役のセリフを声優さんが喋るとき、「いかにもオタク的な」記号的表現になってしまう。で、それは困ると。絵の方はリアルな方向性で作られているのに、芝居のほうがデフォルメされると、両者の整合性が取れなくなってしまう。
ちょっと脱線。声優の喋り方については、監督的に我慢ならない点があるようで…
今敏:『ん何だってぇぇ?!』や『ばかなぁぁぁ』といったオーバーな表現が気に入らない。お前ら現実世界でそんな喋り方しているのか?と。
桃井:声優の側から言えば、ああ言う喋り方でないと寂しい作品もあるし、声を張っているほうがパワーを感じさせる。アメ横の店員さんみたいに、職業モードに入ると、どうしても喋り方が変わってしまう。
今敏:絵が未完成だったり、揃っていないときは、声優のそうした「作った演技」に安心感を抱くことがある。絵のパワーがない分を、声の演技で補ってくれるので。でもいざ絵が完成した状態に声を載せると、今度は余剰を感じてしまう。だから、完成したときのことを考えて、控えめな演技をしてもらうようにしている。同じことは絵の側にも言えて、抑えたシーンの予定なのに、無駄に作画が頑張るのはバランスが取れない。両者のバランスが必要。
桃井:マロミは逆に、徹底して可愛さをデフォルメして出したほうが、最後に変貌したときの怖さが活きてくるということで、あえて過剰な演技を許容してもらった。
ここでその「マロミの変貌」を映像で見ることに。スクリーンの『最終回』の映像を見ながらのトーク。
桃井:「どうやって入ってきたのさ!」というセリフは、妄想の世界で遊びがちな自分とってはドキっとするセリフだった。
桃井:最近のアニメは包み込むような、母性的なものが多い。でも妄想代理人には父性を感じる。
今敏:おっしゃるとおり、父性をかなり意識した作品。飯塚さんに父性を体現してほしかった。劇中で猪狩が一旦ダメになっていくのは、戦後の日本で父性が衰退していったことの象徴。今では癒しがブームになっている。マロミもそうした『癒し』の象徴としてつくられたキャラ。でも自分を癒してくれるマロミも、他方では違う面を持っている。
桃井:猪狩の理想的な妄想の世界を、猪狩が自分自身でバットで壊していくところが好き。すごく爽快な気分になった。
今敏:ノスタルジックな風景をぶち壊して、現実に戻っていく。その風景が、某30年代映画(○丁目の夕日)っぽくて面白い。「懐かしんでんじゃねぇよ!」と言っているようだw
トーク時間はここでタイムアップ。最後にモモーイから一言。
桃井:オンエア時には、こんなに深い妄想代理人の話をする機会は無かったので、このような機会をいただけて嬉しかったです。
最後に今敏監督から、モモーイへプレゼントが。13話の絵コンテに、監督直筆のマロミが描かれた超レア品。これにはモモーイも大感激。
12:45 トークの脱線ぶりから、時間オーバーも覚悟しましたが、奇跡のw定時終了。これは司会の森永まいこさんの仕切りが冴え渡っていたためと思われ。まいこさんGJ!
楽しいお話を聞かせていただいたので、残りのトークセッションにも参加したいところでしたが、強行スケジュールだったため、無念の退散。
アニメーションが総合芸術であること、声優にとってアフレコは監督の頭の中のイメージとのせめぎ合い、たたかいであるということ、リアルとデフォルメが声の演技にも存在すること、など。短時間では有りましたが、かなり濃密な内容のセッションでした。素人の僕がこう思うぐらいですから、本気で声優やアニメ業界を志す人たちには、きっと物凄く参考になったことと思います。
ご冥福をお祈りいたします。