音楽レーベルの垣根を突破したアニサマを待っていたのは、さらに大きな放送局という壁だった、というお話。
今年のアニサマ、例年と比べても新し目のアニソンや、話題作絡みの出演者が多くて「アニサマ頑張ったじゃん」とか思ってたのですが、それにしてはどうも印象が薄い。
振り返ってみると、個々の出演者の持ち時間がやたら少なくて、MCも一言二言で終わるパターンが多かった印象。駆け足というか、淡白というか・・・。
曲紹介もMCもなくいきなり演奏が行われ、後から調べて「ああ、あのアニメの主題歌だったのね」と分かった曲も複数あったり。
これ、タイムテーブルがタイトだったという理由もあるでしょうが、もう一つ「止むに止まれぬ理由」があったと思われます。
それは、所謂「権利問題」。
一口にアニメの曲を歌う、といっても、そこには多くのハードルが存在し、めんどくさい約束事を守らねばならない、のであります。
たとえば楽曲著作権のなかには「演奏権」というものがありまして、フェスなどのライブ・イベントで音楽を演奏するには、その楽曲の著作者に許諾を得ないといけません。
たまにモモーイが曲紹介で「この曲を歌って良いと許可がもらえたので・・・」などと語っているのを聴いたことがある人も多いでしょう。そういう曲は自分の手元に演奏権が無く、ライブの度にいちいち許諾を取らないといけない。(※セルフカバーで新規音源をリリースすれば、その「カバー版の演奏権」が手元に来るので、以降は実質的に自由に演奏できるようになる。余談。)
で、この権利をアニメの「製作委員会」が持ってる場合、アニサマで演奏するためにはこの委員会との交渉になるわけですが、その際に委員会が取ってくるであろう対応は、家元の研究では以下の通り。
ケース① そもそも演奏させません!
「自分の番組関連イベント以外では演奏させません」という対応。門前払いですね。そんなに敵視しなくても良いじゃんね。僕の予想では「けいおん!」とかがこのパターン。
ケース② ◯年経ったら演奏しても良いですよ
テレビ朝日の特撮番組や女児アニメ(プリキュア)がこれに該当。だから「只今放送中」の戦隊やライダーの主題歌は演奏できない。AAAの「Climax Jump!(仮面ライダー電王)」や、今年の土屋アンナ「Switch On!(仮面ライダーフォーゼ)」は一年遅れ。
あれ、Gacktはディケイドの歌を放映年(2009年)に歌ってたよね。じゃああれはどうなの?と思ったら、あれは「映画版の主題歌」だったというオチ。
アキバレンジャーの版権はよく分からないのですが、おそらく公認戦隊に準拠すると思われるので、仮に今年モモーイが出演していたとしても、歌えたのは初代アキバレの曲のみだったと思われます。
ケース③ 演奏しても良いけど、映像やロゴにはお金頂きます
イベントに理解がある権利者だと、ほとんどはこういう反応になるでしょう。これはビジネスとしてはまあ普通。
アニサマはその場限りのライブではなく、後々パッケージで映像ソフト化することが確定しています。演者のライブパフォーマンスのバックスクリーンにアニメの絵を流したとして、それがブルーレイ/DVDの画面にちょっとでも写り込んでいたら、もう権利侵害(笑)。「うちの映像で商売するなら金よこせ」ということになる訳ですね。アニサマのライブ会場でアニメの映像が流れた曲は、こうした権利関係がクリアになったものか、残念ながらブルーレイ/DVDには収録されない(汗)かのどちらかです。普通は上演とパッケージの許諾はワンセットのはずなので、後者の例はちょっと考えづらいですが。
ケース④ 演奏しても良いけど、タイアップについて触れてはいけません
にわかには信じがたいのですが、こうした契約が現実に存在するらしく、僕は驚きを隠せません。
たとえば、今年出演したZAQは「中二病でも恋がしたい!」OPテーマ曲の「Sparkling Daydream」を歌ったわけですが、タイアップ先の「中二病でも恋がしたい!」という番組タイトルをMCで言うことが許されず(!)、苦肉の策としてラップパートのリリックに、タイトルを分解した単語を紛れ込ませる(!!)という、涙ぐましい工夫をしていました。
他の演者でも、曲紹介で曲名しか言わず、タイアップアニメのタイトルに触れない例が散見されましたが、それは緊張のせいで言うのを忘れたのか、それとも契約上触れられなかったのか。果たして真相は如何に。
ケース⑤ お好きな様にしてください
アニサマの制作に出資してる企業のアニメ、たとえばMAGESの「シュタゲ」「ロボノ」「ネプテューヌ」などはアニメ映像、ロゴなど使い放題。まあ、千代丸が太っ腹という訳ではなく、そもそも予算的に織り込み済みというだけの話ですので。
というように、一口にアニメタイアップ曲を歌うといっても、権利関係のクリア度合いによって、曲の演出に差が出てしまう結果になるわけですね。MCでたっぷりタイアップの思い入れを語る人もいれば、あっさり済ませてしまう人、触れない人も出てくる。「どうせDVDでカットされるんだから、最初から言わない」という選択もあるのかもしれません。
冒頭で触れた、全般に漂った「駆け足感」「淡白さ」は、こうしたところにも原因がありそうです。
権利関係の大変さを嫌気して、それが既にクリアされた無難な曲ばかりを選べば、マンネリと言われてしまう。
かといって、あまり正面から取り組んでしまうと、権利はクリアできたけどチケット代が超高額になりました(今でも十分高額なのに!)とか、BD/DVDの値段が倍以上に跳ね上がりました(今でも十分以下略)という結果になりかねない。
結局はそこのさじ加減、バランスを運営がどう調整するか、という点に尽きるのでしょう。万人が満足するセットリスト、出演者を用意することは不可能でしょうが、それでも、それに近づける努力だけは怠ってほしくないですね。折角「アニメ」関連では世界最大級のイベントに育ったのですから。
来年も、旬のアニメから懐かしのものまで、「アニメの曲」が沢山聴けるイベントになることを期待しておきます。
さて、気がつけばモモーイのワンマンまで2週間ほどになってしまいました(;^ω^)
このブログも本分である「モモーイ情報」に舵を切っていきたいところ。
次回更新からはモモーイライブへの傾向と対策について、細切れにエントリーを書いていこうと思います。